この時代に知る「身近マーケティング」入門

小売各企業の業績

Post2012.05.14    Category小売業界の今

小売各企業の決算月はなぜか2月が多い。

2012年2月期決算はすでに発表されているが、意外にも過去最高の業績となった企業が相次いでいる。


小売2強とはやしたてられているイオンとセブン&アイ・ホールディングスの売上高と経常利益は
「イオン」 売上高:5兆2061億円 経常利益:2122億円
「セブン&アイ・ホールディングス」 売上高:4兆7863億円 経常利益:2931億円
であった。「イオン」は経常利益が過去最高であった。


百貨店では大丸・松坂屋の統合のJフロントリテイリングが2月度決算での売上高トップで、単体での高島屋がそれに続いている。
「Jフロントリテイリング」 売上高:9414億円 経常利益:229億円
「高島屋」 売上高:8581億円 経常利益:243億円

※注意 3月度決算では三越伊勢丹の2012年3月期決算が5/11日付け日経新聞に掲載されている。 売上高:1兆2399億円 営業利益:238億円


コンビニ業界ではセブンイレブン・ジャパンがダントツなのだが、その業績は上記「セブン&アイ・ホールディングス」に含まれているため、それ以外の企業のローソンとファミリーマートの業績を挙げる。
「ローソン」 売上高:4789億円 経常利益:617億円
「ファミリーマート」 売上高:3292億円 経常利益:448億円
「ローソン」の経常利益は過去最高であった。


その他専門チェーン(ファーストファッション)であるユニクロのファーストリテイリングは経常利益を1000億円の大台に乗せた。
「ファーストリテイリング」 売上高:8203億円 経常利益:1070億円



このような好業績の要因は東日本大震災に伴う復興需要によるところも大きいが、それ以上に小売各社の本業自体の作り直す取組が結果となってあらわれてきたのだと言える。

「イオン」は総合スーパーにおいて、各売場が路面店に出せるほどに専門性を高め、業績の復活に手ごたえを感じてきている。
百貨店も売場構成における既存の概念を打破しょうとしている。
「ユニクロ」の導入等はその一例でもあると言える。


今、この「本業の作り直し」作業を怠る企業の明日はない!
すなわち仮説と検証の繰り返す作業が明日の小売業を造っていくのだと言える。

小売業の人気凋落

Post2012.05.05    Category小売業界の今

本当に久しぶりである。仕事の関係のこともあり、このブログは半年ほどお休みをいただいた。

再開の最初のカテゴリーはやはり「小売業の今」にしたい。


以前から気になっていることだが、最近、小売業の人気がパットしない。学生には小売業は不人気なのだ。

一昔前、百貨店に勢いがあるときは学生の就職したい企業ベスト10に伊勢丹等が顔を出していた。

AERAの'11.12.19日号で 人気企業100社の「採用大学」の記事が出ていたが、マイナビが発表した「就職企業人気ランキング」の中に小売業は一社も入っていなかった。


では外国はどうか?小売業の本場といえばやはりアメリカである。
アメリカには世界最大の小売業ウォルマート・ストアーズが存在している。その年商は一国のGDPに匹敵するほど巨額である。(約40兆円)

アメリカでは小売業はかなりの人気業種となっている。
フォーチェンは毎年「アメリカでもっとも働きたい企業100社」を発表しているが、昨年度のベスト10の中に小売業は3社入っていた。


この違いはいったいどこからくるのだろうか?

我が国は技術大国を売り物にした輸出立国である。ものづくりが生命線である国で、特に重長広大産業を軸にして産業構造が出来上がっている。
だから我が国は特に第2次産業が重視される風潮が強く、小売業に対して社会の共感が得にくいお国柄だと言える。


一方アメリカはマーケティングを発展させてきた国である。
マーケティングとはニーズとウォンツを満たすための交換プロセス(フィリップ・コトラー)として、マーケットインの思想を発展させた国である。

こちらの国ではマーケターの価値は高く、社会の小売業に対する共感も充分得られている。



このような社会の共感の違いが小売業の人気の違いとなっていると思っている。













流通業のロマン(2)

Post2011.11.01    Category小売業界の今

非常に慌しく毎日を過ごしている。
特に10月は目の回るような日々を送っていた。


2週間飛ばしてしまったが、「流通業のロマン」について再度述べたい。

故渥美俊一先生が提唱された「流通業のロマン」は経済民主主義の世の中を実現させることであった。

すべての商品がいつも低価格で購入できる世の中、経済の仕組みを作り上げ、国民が等しく経済的豊かさを享受できる世の中、すなわち「経済民主主義」の実現を目指すことが「流通業のロマン」なのである。

そのための手法としては唯一、本格的なチェーンストアー作りをして、マスマーチャンダイジングを目指さなければならないと熱く指導された。


そして思考形態は止揚(アウフヘーベン)が必要である!とも指導されていた。

一般的に社会通念では「安いものは品質が悪い(テーゼ)」であり、「高いものは品質が良い(アンチテーゼ)」となっている。

それを「価格は安いが、品質は良い(ジンテーゼ)」への思考形態である。


ちなみに「止揚(アウフヘーベン)」とはドイツの哲学者ヘーゲルが提唱した概念である。

ヘーゲルはこの言葉を用いて弁証法的発展を説明した。
つまり、古いものが否定されて新しいものが現れる際、古いものが全面的に捨て去られるのでなく、古いものが持っている内容のうち積極的な要素が新しく高い段階として保持される。

国語辞典では、違った考え方を持ち寄って議論を行い、そこからそれまでの考え方とは異なる新しい考え方を統合させていくことと説明されている。
<出典:フリー百科事典『ウィキペディア』>


すべて新鮮な思いで講義を受けた日々が懐かしく思い出される。



低価格販売の付け

Post2011.10.04    Category小売業界の今

今、回想してみると、渥美先生は「低価格販売でなければダメ」的思想をいつもお持ちだったのだと思える。

経済民主主義(economic democracy)の世の中の実現は、低価格でお値打ちな商品創りをすることにより実現可能と言うのである。



1991年バブル崩壊以降日本経済は疲弊して、国民所得(GDP)はマイナス成長となった。

家計は目減りするから消費者は、当然より安い商品を求めそのニーズは高まるばかりとなって行く。


経済が右肩上がりのときは「渥美理論」は正にロマンを感じさせるに充分な内容であり、遠い目標と思われたのだが、そのことが正に現実的な課題として突きつけられ実行するとなると、いろんなひずみ・問題が発生した。


それは政治の世界におけるポピュリズムに陥った民主政治のような危うさだったと思われる。


まず実体経済はデフレスパイラルに陥ってしまい、デフレ基調から抜け出せなくなってしまった。

経済の難しさはここにあると私は思う。


「安さ」は消費者の願いでありニーズであり、経済民主主義を成し遂げる基本的要素なのだが、技術革新なくしてそれを成し遂げるとなると、その主体者となる製造業者は身を削る(利益を削る)ことしか実現する方法が見つからない。

当然製造業者は減収を余儀なくされ、企業活動は停滞していく。

そこに働く従業員の所得は減り、家計のやりくりが大変になり、さらに安さを求めると言うパターン(デフレスパイラル)になる。


市場経済社会はあくまでもドライである。

市場が「安さ」にベクトルを合わせすぎるとドライな価格競争となり、「不毛な価格競争」を招く結果ともなる。

いわゆる「意味のない値下げ」の乱発となる。
低価格販売の付けとも言うべきことである。


市場に適正な価格体系秩序の構築を望む。



流通業のロマン(1)

Post2011.09.28    Category小売業界の今

MJ(日経流通新聞)コラム「底流を読む」で タイトル:流通業のロマンー低生産性を放置するなー消費産業部次長 白鳥和生氏が論述されていた。



昨年、流通コンサルタントの渥美俊一先生がお亡くなりになった。

渥美先生は元読売新聞社の記者で、昭和30年代初めに商店街を取材されるきっかけを持たれ、小売業の零細性、労働環境の劣悪性、低生産性 等々を目の当たりにされた。
日本の流通業界、特に小売業(Retail)の改革・改善の必要性を痛切に感じられ、生涯に亘りその指導にご尽力された方である。


「経済民主主義(economic democracy)」という言葉を使われ、国民が等しく経済的豊かさを享受できる世の中をつくるべきだと力説されていた。

そのためには本格的なチェーンストア作りが必要であり、そのことが「経済民主主義」実現の唯一可能な方法だとも指導された。

マスプロダクト・マスセールにより適正品質の商品を低価格で消費者に提供し、「ご利益(ゴリヤク)」を提供する。このことが小売業の果たすべき使命なのだ!と啓蒙し指導された。

それを実現するためには優秀なマーチャンダイザーが必要となる。

マーチャンダイジングを商品化計画と訳し、それを行う人が「マーチャンダイザー」である。

マーチャンダイザーはご利益な商品創りのために、最良質な素材で低価格な原材料を世界中駆け回り探し出し、仕様書を作り、世界中で最も適切と思われるメーカーを探し、そこに発注して、マスプロダクトを行い、その商品をすべて買取り、そして自社のチェーンストアーでマスセールする。

店舗で品揃えされる商品アイテム全ては、このようなマーチャンダイジンングにより創られ、価格は現在価格の1/3で販売をされる。

このような事業活動の結果、めざす「経済民主主義」の世の中は実現できるのだ! と熱く語られていた。


正に「ロマンを語る」である。



ユニクロの成長を支えたSPAは正にそのセオリーどおりの手法だったと言える。

渥美先生が各チェーンストアーを指導されていた頃の経済は右肩上がりであり、デフレ経済の予感はなかった。


しかし、日本経済はバブル経済がはじけて以来本格的なデフレ経済を経験した。


次回でデフレ経済下での「渥美理論」について述べたい。
 
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