この時代に知る「身近マーケティング」入門

労務構成変更による人件費コントロール

Post2010.03.31    Category小売業の現場

小売業や飲食業は顧客を中心にして仕事が回っている。

小売業は来店客が多くなるAM11時〜12時及びPM4〜6時に売上高、作業量共にピークを迎える。
それに合わせて人時の投入が必要になる。

「人時管理は時間帯ごとの作業量、すなわち人時を積み上げていき、必要な総人時を計算して人員の確保をする」と前回述べた。


その時大切な要件は良質の人時をローコストで確保することである。

ローコスト人時とはパート・アルバイトの確保であり、政策はパート比率の向上のことである。




あるスーパーマーケットの労務構成変更による人件費コントロールをシュミレーションしてみよう。

雇用形態毎の時給(単価)は
パート・アルバイト(パート単価)は800円で社員は2,500円(社員単価)だったとする。

※社員の時給(社員単価)は月給30万円で賞与、会社負担の社会保険料、退職引当金等も月額に換算して足し込み174時間で除した金額


まず、パート比率が0の場合(全て社員のみの場合)
1人時単価は当然2,500円になる。
パート比率40%の場合は1人時単価は1,820円になる。
パート比率50%の場合は1人時単価は1,650円になる。
パート比率60%の場合は1人時単価は1,480円になる。
パート比率70%の場合は1人時単価は1,310円になる。
パート比率80%の場合は1人時単価は1,140円になる。

パート比率を高めていくと当然1人時単価は低下していく。
削減率はこの1人時単価から計算できる。


例えば現在パート比率が50%であるが、この労務構成を改善してパート比率を60%にした場合は (1650-1480)÷1650=10.3%
人員(人時)は同じであるが人件費は10.3%削減される。

パート比率70%にした場合は (1650-1310)÷1650=20.6%
人員(人時)は同じでも人件費は20.6%の削減となる。



このようなシュミレーションをしてみると小売業経営における人時管理と労務構成変更は如何に重要な要件であるかが分かる。

小売業経営の要諦と言っても過言でない。

人件費コントロールと人時管理

Post2010.03.24    Category小売業の現場

中小企業ではよく「人に作業がついて回る」と言う表現をすることがある。

その人しか出来ない作業があり、人事異動してもその部署以外の仕事として作業をつけて異動するのである。

作業の標準化が出来ていないことが主な原因であるが、そのことを容認している管理者の怠慢とも言えることである。

このことは人に作業が割り付けられる代表例である。
蛇足で言うとこのような作業はブラックボックス化しやすく、管理者のコントロール不能状態になるものだ。
全く好ましい状況ではない。



小売業の場合、飲食業等と同様に顧客を中心にして仕事が回っている。
そのため作業の量は時間帯によって大きく違う。

「人時管理」の考え方は人に作業は割り付けない。
作業に人を割り付けるのである。


時間帯ごとの作業量すなわち総人時を積み上げていき、必要な総人時を計算して、人員の確保をするのである。



人件費削減の最も簡単で安易な方法は単なる人減らしをすることである。

人を辞めさせ人員を少なくすれば経費としての人件費は確実に削減できる。
ただ顧客を中心にしている作業は滞り、サービス低下は必至であり必ず顧客はその店を離れていく。


小売業においてサービス向上と人件費削減はトレードオフの関係にあるが、この両項目を満たす解決方法は先ず 「人時管理」で作業に人を割り付けることである。

さらに、労務構成の変更がポイントになる。

労務構成の変更とは社員をパート・アルバイトに置き換えることである。
すなわちパート比率を高めると言うことだ。
但し、教育体系を整え、パート比率の高い状況で運営できるサポート体制が必須条件になることは言うまでもない。


通常、社員は月給(月額支給額)の他、賞与が支給されるので事実上の月給は高くなるものだ。
又、会社は社員の社会保険料(厚生年金、健康保険)の半額を負担し、さらに退職引当金の負担も強いられる。

だから社員の月額支給額の3〜5割増しが事実上の月給になるものと言える。



労務構成の変更をした場合、どれだけ人件費コントロールができるか具体的にシュミレーションをしながら次回説明したい。

人件費コントロールと計数

Post2010.03.16    Category小売業の現場

小売業は労働集約性が高く、人件費コントロールが経営において生命線になってくる。

今回は人件費コントロールをする上で必要な計数について述べる。


まず代表的な計数は労働生産性である。
労働生産性とは粗利益の額を要員数で割ったもので、一人当たり稼ぐ粗利益高を算出するものだ。

ただ要員数の数え方は雇用形態が違っても区別しない。
だから時給換算でパート・アルバイトと明らかに違う正社員(高い)もみな一緒に数えるところが問題点である。

次に労働分配率である。
これは人件費を粗利益高で割ったもので、粗利益高に占める人件費の割合である。
一般的には労働分配率は45%以下であるべきのだが、今日はそれ以上になっている企業が多い。

以上が粗利益高をベースにした計数である。


売上高をベースにした計数の代表的なものには人件費率(売上高対人件費比率)がある。
これは文字どおり売上高に対する人件費の割合である。
通常は8〜12%である。

人件費率と労働分配率の関係は 人件費率÷粗利益率=労働分配率 となる
(人件費/売上高 ÷ 粗利益高/売上高 = 人件費/粗利益高 )


以上は人件費管理における伝統的な計数である。



近年は人件費コントロール、人の効率化と言えば人時生産性を用いるようになっている。


人時とは作業量を表す単位であり、1人時(1M/H:Man Hour=マンアワー)とは1人が1時間に行う作業量のことである。
例えば10人時とは1人で10時間かかる作業量のことである。
この作業量は2人なら5時間の作業であり、この場合も10人時とする。
5人なら2時間、10人いれば1時間ですむ作業であり全て10人時で表される。


そして人時生産性であるが、これには2つのとらえ方がある。

1人時あたりの粗利益高でとらえる人時粗利益高と、1人時あたりの売上高でとらえる人時売上高である。


例えば2人で4時間に売上20万円を作ったとする。
その店の粗利益率が30%とすると、

人時売上高は 20万円÷(2人×4時間)=2.5万円 となる。

人時粗利益高は 20万円×0.3÷(2人×4時間)=0.75万円(7500円) となる。

この2人の時給(1人時単価)が1500円であるのであれば 1500円÷7500円=20% 要するにこのときの労働分配率は20%であり、かなりの効率的な店と評価される。


次回は人時生産性、パート比率、労働分配率、時給(1人時単価)、人件費削減率 等を組み合わせて人件費管理を述べたい。








人件費管理とセルフサービス方式

Post2010.03.10    Category小売業の現場

事業経営は結局のところ人件費との戦いであるといっても過言ではない。


古きよき時代では、粗利益は1/3を人件費に、1/3を諸経費に残りの1/3が最終利益にするような経営にするべきとも言われていた。

要するに労働分配率(粗利益に閉める人件費の割合)を33%ほどにすることが優良企業になる条件だというのである。

現在の日本でこのような労働分配率で事業運営をしている企業を探すことは非常に難しい。

特に物品を販売する小売業では、顧客に対して商品の説明を要し販売時には代金を受け取る必要がある。
これらの実務は機械に置き換えることは難しく、やはり人が担当せざるを得ない。
労働集約的産業なのであり自ずから労働分配率は高くならざるを得ない産業なのである。



しかし、小売業の世界でコペルニクス的な発想転換がなされた。

セルフサービス方式である。

確かに、商品に関する説明を求めて購買したいものもある。

使用方法が分らない商品、適正な価格の情報が得にくい商品、購買頻度が極端に低く経験則が働かない商品 等々は必要な情報を得ながら購買したいのである。
自動車、パソコン等に類する商品である。

このような商品は専門品と呼ばれ、専門知識を得て購買する商品としてカテゴライズされる。

しかし、このような商品以外のほとんどは、顧客は気兼ねなく自由に商品を選んで商品に触れられて、自由に選択でききる状況での購買を希望する。

従業員が商品説明のための接客と称して近づいてくることに煩わしい思いをした経験を持っている方も多いと思う。


必要であると思われた業務(接客)は実は顧客ニーズに合致していなかったのである。
むしろその業務がない方に顧客ニーズがあったと言う事である。




このこと(接客しない)は顧客ニーズの合致と言うこと以外に本当はもっと大きな重要な要素を含んでいた。

人件費の大幅な削減である。


顧客ニーズに合致した上で人件費の削減になるという、正に小売経営においては願ってもない方式がセルフサービス方式なのである。


百貨店の食品売場は、長く伝統的な対面販売方式であったが、凋落の一途をたどる事業経営においては、百貨店においてもセルフサービス方式を取り入れざるを得なくなっている。


蛇足説明だがもう一言加えておきたい。

今日、食品の販売と言えばセルフサービス方式なのだが、このことを可能にした要件として、什器備品の発明・開発があったことを見逃せない。

生鮮食品等の販売に欠かせないのはオープン冷蔵ショーケース、冷凍ショーケースである。
食品衛生法でも生鮮食品の販売は冷蔵保存販売等を義務付けている。
この冷蔵ショーケース、冷凍ショーケースの発明・開発がセルフサービス方式を可能にしたのである。

そしてもう一つがキャッシュレジスターである。
金銭登録機と呼ばれた時代から現在のPOSレジまで、キャッシュレジスターの開発者の日夜の努力が現在のセルフサービス方式を可能にしているのである。

惣菜売場づくり

Post2010.03.03    Category小売業の現場

惣菜の市場規模は1970年代半ばではわずか5000億円に過ぎなかったが、今では10兆円を超えていると思われる。

その成長の社会的背景には有職主婦の増加、高齢化社会等が挙げられるが、スーパーマーケット等の惣菜調理の技術レベルの向上も見逃せない。

惣菜関連の企業も多く、今日、消費者の惣菜への関心は益々高まっている。

俗に言われる「手抜き」「ずぼら」「いやし」食品として惣菜は今後、成長することはあっても衰えることは無い筈である。



前回のブログで、惣菜は飲食の世界と同じ概念で事業運営を行わないとロスリーダー部門化すると述べた。
値入率も60%は必要とも述べた。
しかしこれはあくまでも考え方であって、品揃えされる全部の商品に対して言っているのではない。


人手をかけざるを得ない惣菜売場は「効率」と「効果」のトレードオフなのである。

効率を求めれば縮小均衡に陥ってしまう(競争に敗れる)。
効果を追求すれば人時生産性が悪くなる(利益が出ない)。

結局、惣菜売場は効率と効果をいかに良くバランスを保つかが全てだと言える。
惣菜は企業のノウハウ力がモロに出てしまう売場なのだ。


「効率」は自社のプロセスセンターを使うか、あるいはアウトソーシングにより下処理又は半製品にすることで追求する。
単価の低い、効率性を求める商品作りはインストアー加工ではダメなのである。

他店にまねの出来ない、消費頻度が高い自慢の商品(看板商品)は当然手作りでなければ出来上がらないし、人手がかかる筈なのである。
この「効果」を追求する商品が競争の武器となる。


このような「効率」商品と「効果」商品を値入ミックスすることで、競争に打ち勝ち、尚且つ粗利益率は50%近く確保できるのである。


例えば平均日販が30万円の惣菜売場で粗利益45%確保するとする。
この場合、人時生産性が8000円なら17人時(M/H)使用でき、7000円なら20人時(M/H)ほど使用できる。
この人時(M/H)を作業時間帯ごとにスケジューリングすると、一日の繁忙時間帯(3時30分〜5時30分)では5〜6人程の作業者が確保できる。




惣菜売場は味作りという技術力と、効率追求のための科学性合理性を共に求められる難しく重要な部門なのである。


※参考:人時生産性とは作業者1人1時間当たり稼ぎ出す粗利益高のこと。
時給1500円とすれば労働分配率30%で、人時生産性は5000円となる。
人時生産性8000円は稼ぐ売場にしたい。










 
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